2007年11月30日金曜日

「『海の色が変わった』と昔と同じような胸騒ぎを覚える」(田淵節也)



野村證券元会長の田淵節也氏は89年のバブルがはじける直前に「海の色が変わった」と発言し話題となった。日経新聞に今日まで「私の履歴書」を連載されてきたが(これ抜群に面白かったが、それはさておき)最終日の今日のコラムで、「その時感じたのと同じような胸騒ぎを覚える」と書かれている。

抜粋:
  1. 「アメッポン」と言われる日本は米国に振り回されてきた国だ。その米国が今また、大きく変わる節目にあるような気がしてならない。
  2. 来年の大統領選挙で民主党が勝てば、イラク戦争の厭戦気分が一団と高まり、中東情勢は混沌とするのではないか。
  3. 軍事力に陰りが出れば、ペーパーマネーのドルの信認が低下し、米国は金や原油、穀物などの実物資産を裏付けとする新しい通貨制度を考え出すのではないかと思う。
  4. そうなれば、金本位制が「ドル紙幣本位制」に変わって以来の大変化だ。世界中が混乱し、アメッポンの日本は一番大きな影響を受ける。すでに、政界はざわついてきた。
  5. 僕は安倍さんが総理になったとき、「蒸留水しか飲んだことがない人は持たないのではないか」と思った。
  6. 小沢一郎さんが天下を取るのか、小泉純一郎さんが再登場するのかは分からない。いずれにせよ、日本の政治も大揺れするのではないか。
  7. 高度成長期以来、ぬるま湯につかってきた日本は、久しぶりに大激動の時代を迎えるように思う。
  8. 僕は日本の将来を悲観も楽観もしていない。「職人国家」としてそれなりの世界でのステータスを保っていけると思うから心配していない。
  9. もっとも、軍事力も持たずに「金融大国」の幻想を抱いている人は幻滅するかも知れないが……。
  10. 改めて人生観を自問すれば「人間は太古の昔から同じことを繰り返している動物」と言うことだ。
  11. 人生は思った通りにはならない。だから人生は面白いのであり、結果的にハッピーなのではないか。
  12. 「人間三代でチャラ」とはよくいったもので、いいことばかりは続かないし、悪いことばかりも続かない。それもまた人生の面白いところだ。
  13. 人間は変わらないが、世の中は変わる。これが実感であり、不変の真実なのだと思う。
  14. ブラジルの港町サントスの海岸で、沈む夕日を背に、奴隷の子孫の黒人が跪き、先祖の故郷アフリカに向かってお祈りする姿に、ただ感動した(ことがある)。心に焼き付いて離れない光景だ(った)。

なんか最後は「2001年宇宙の旅」の不思議な映像を思い出すようで、実に見事だ。この「私の履歴書」を読まれていない人がいるなら、図書館でコピーしてでも読むべきだと思う。日本の戦後経済史そのものなのである。今や歴史となった時代の局面局面での整理の仕方が実に良い。また田淵節也氏の人柄のすばらしさがまともに伝わってくる文章がいい。

さて、この最終回での総括をどう読むか。投資戦略にどう活用するか、である。散人なりの戦略:
  1. 日本株は、グローバルでかつ業界断トツ企業を残して売る。
  2. ドル資産は、ポートフォリオの20%以内に。同じ比率以上のドル以外の外貨資産(ADRなどの外貨連動資産でも可)を持つこと。円比率は半分程度に。
  3. 債券比率を大幅に増やす。世界REIT(もしくは人口増加地域での実物収益不動産投資)を増やす。
  4. 新興国株式投資はまんべんなくやっておくこと。どこが伸びるか分からない。当然資源国は忘れずに。
  5. 金は収益を生まないからやらない。もしドルが金に連動するようになるなら、ドルを持っていても同じこと。

まあ、台風対策として大きくは間違っていないと思う。問題は実行力だな。今年に入って三度も、決めていたのに日本株を売る機会を逃してしまったから。

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